1993年に厚生省が生活環境審議会に専門委員会を立ち上げ容器包装リサイクル法(以下、容リ法)の制定に向かったころ、筆者は日本コカ・コーラ株式会社の環境部長として、飲料業界サイドから容リ法制定に関わった。また、10年後の見直しが本格的に始まった2004年には、それまでの(財)日本容器包装リサイクル協会(以下、容リ協会)の企画調査部長から(社)全国清涼飲料工業会(以下、全清飲)の専務理事に転職し、容リ法の見直しに深く関わることになった。
法の制定と改正の両方に、そして運用にも関わった数少ない一人として、その背景や実情を産業界の立場から見て聞いて感じたことを記録し、次期見直しを含む今後の容リ法のあり方を考える上での参考としたい。
容器包装のリサイクルには多くの関係者がいて、その利害関係は実に複雑に錯綜している。しかも特定の思想の実現を図る人々も議論に参画する。そのような状況下で容リ法がいかに制定され改正されたのであろうか。この分野における学者や市民運動家の著作や論文は少なくないが、筆者は主として理論と実際との違いという視点から容リ法を論じてみたい。
この著書は、インターネット等で入手できる資料やデータを集めたり、公開されている文献に基づいて法を解説するものではない。それらからは読み取れない法制化の背景を筆者自身の経験をベースに述べるものである。
なお、内容のほとんどは筆者の記憶に基づくもので、記憶違い、勘違いもあり得る。それらについては、ここに予めお詫びするとともに、正しい情報をフィードバックしてくださるようお願いしたい。
−「まえがき」より− |